欧州金型部品メーカーの動向
工作機械はイギリスに端を発し、ドイツやスイスなど欧州各国で発展を遂げた。欧州の工作機械は日本の製造業に影響を及ぼしているが、日本の工作機械や金型部品産業が成熟した現在では、多くの日本製工作機械が欧州で稼働するまでになった。とはいっても、欧州の工作機械や金型は、日本とは異なる設計思想で開発されており、今も市場で強さを発揮し日本に新しい価値を提供している。
欧州の工作機械についてはさまざまな執筆者が注目し最新記事を目にするが、金型部品はどうだろう?筆者は欧州金型部品メーカーの代理店の一人として、欧州金型に目を向けてきた。本稿では、そこで見えてきた欧州の状況をお伝えしたい。
分散化する市場
欧州諸国はEU として貨幣までも統一したが、マーケットとしては一つに統一しきれておらず、細分化している。そのため金型で、圧倒的に欧州マーケットを制しているメーカーはないのが現状である。
しかし、どの業界においても値段で攻めるメーカー、高付加価値で攻めるメーカーとそれぞれの戦略があり、独自性を打ち出すことで市場での認知度向上を狙っている。
日本での金型部品市場は大手金型部品メーカーによる寡占化が進み、中小金型部品メーカーはオーダーメイド部品やニッチ市場で強みをもつ部品を提供し市場のニーズに対応している。一方欧州は、多数の中規模金型部品メーカーの傘下にまた中小のメーカーがあるといった具合である。
付加価値製品の市場が広がる欧州
ここ数年、日本ではリーマン・ショック後のような雰囲気が払拭され景気が上向いてきたことで、価値のあるものが見直され高価格帯のものが売れる時代となった。だが、欧州は一貫して価値があり、かつ高価なものをつくり続けてきた。欧州の金型部品メーカーには、日本にはないような製品があって非常におもしろい。
欧州金型部品は日本の金型の役に立つか
欧州の金型部品の中には、「何これ?」と思うような不思議な形状の製品が散見されるが、そんな製品ほど素晴らしいパフォーマンスを発揮することが多い。見ただけでは見つけられないようなノウハウが欧州の部品にはこめられており、これは実際に使ってみて初めてわかる。なかには役に立たない部品も存在するが、目を凝らして見ると違いもわかってくる。
そこでいいモノとよくないモノを見分ける選別眼が磨かれる。欧州の金型部品を使ってみることで技術者として成長し、日本企業の競争力の向上に役立ててもらいたいと思う。
金型部品はなかなか新製品が出ないと思われがちだが、実際には頻繁に新製品が登場している。